1970年に連載されたものの、単行本未収録だった今作、上村一夫のくノ一物を読んでいただきたい一心で上梓しました。
Amazonの電子書籍は絶版の漫画や単行本未収録の漫画を個人でアップできるからとても便利。
これからも面白い漫画やエッセイなんかもアップしていきたいと思います。
ちなみに次回は『すみれ白書』です。
Facebookでフォローしてくださっている方にリクエストしていただきました。
実はてっきりアップされているものと思っていたという抜け作ぶり。
これはやらねば、と奮起しています。長いけど。
いつか紙の本で全集が出る日を夢見ながら………………
今回の『くの一異聞』は、原稿があまり残っていなかったため、雑誌からスキャンしてレタッチ作業する分量が多かったのですが、1970年の雑誌の印刷の悪さときたら…修正するのが大変でした。
せっかく綺麗に原稿を仕上げたのに、こんなに荒く印刷されて本人はどんな気持ちだったのだろう、と思わずにはいられなかったのですが、昔、演出家の久世光彦さんが上村一夫についてこんなことを書いてくださったことを思い出しました ↓ ↓ ↓
「上村一夫の魅力は匂いである。匂い – 中でも女の匂いの描ける絵師は、そういるものではない。ましてや上村が女の匂いを描いたのは、上質の絹張りの画布ではなく、粗雑な雑誌用の濁った褐色に近い紙だった。その紙の上で上村の女が身じろぎすると、唇を噛むと、小走りに日昏れの路地を走ると – 溜息のような桃の匂いがページの中から立ち昇ってくるのだった.。
確かに粗雑な紙だからこその情緒もあるのかもしれないけれど、生の原稿を見てみれば、非常に美しい線で描かれているので、非常にもったいなく思えてしまうのです。
なかなか消化しきれない思いを抱えている頃、エルド吉水先生の『龍子』が出版されました。
担当編集者が普段仲良くさせてもらっているエ☆ミリー吉元嬢だったので、すぐに読ませていただきましたが、全ページ手描き(それもすごい手数!)の爆走ハードボイルド、主人公の龍子はじめ女性がセクシー&ワイルド。一気読みしてなんだか元気をもらいました。
エルド先生、経歴がまた面白く、なんと45歳でパブリックアートの世界から漫画家に転向。自らを『劇画家』と称するそうです。
これは青山ブックセンターで行われるトークイベントにも参加するしかないと思いさっそく応募。
当日はエルド先生とエ☆ミリー嬢が登壇され大盛り上がり。面白い話をたくさん聞くことができました。
イベント終了後、ひょんなことから来場されていたエ☆ミリー嬢の父上であるバロン吉元先生と青山ブックセンターからほど近いビリケンギャラリーへご一緒することになりました。
そこで父と同い年の先生に、当時の雑誌の印刷の悪さを気にしていたのかどうかお聞きしてみることに。
先生は「そんなことは忙しくて気にしなかったし、出来上がったものに関してはどうでもよかったんだよ。上村さんはもっとそう思っていたんじゃないかな」とバッサリ。思わず笑ってしまいながら、胸につかえていた何かがスーッと取れていったのです。
やはり当事者のお言葉は説得力あります。当時の勢いが伝わってきました。
父は仕事の話をする間もなくいなくなってしまったので、バロン先生にお話を聞くことができたのは大変ありがたかったし、大人になって父親と話すってこういう感じなのかな、と想像してみたり。
エルド吉水先生の導火線のようなエナジーと、父と同い年のバロン吉元先生の達人のエナジーに励まされる1日でした。
父親が50年以上前に描いた(埋もれようとしていた)漫画を復刻するために、資料提供をしてくださった方、いつも応援してくださる方々、様々な方のエネルギーをいただいております。
それによって復刻した上村漫画から何かを感じてくださったらこれ以上の喜びはありません。