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上村裏日誌

2015/02/03 Tue

愛の犯罪者

昨年の東京国際映画祭コンペティション部門に出品されたこの映画。
原題は『L’amour est un crime perfait』、邦題は『愛の犯罪者』。
監督はアルノー&ジャン=マリー・ラリユー、
主演はマチュー・アマルリック。

Twitterで、主人公の大学講師が大学の講義で上村一夫の言葉を引用している!と書かれていたので公開を楽しみにしていたらいつのまにかDVDになっていたのでAmazonで買いました。

” 日本の漫画家 上村一夫の言葉だ。人への影響で最も強いのは原体験ではなく、その人の過ごした原風景だ ”

これは最初、『関東平野』の単行本のカバーの袖に書かれた言葉ですね。
ラリユー兄弟のどちらかがフランス語版『関東平野』を読んでくれたのでしょうか、
たった数分の場面だったけど、なんだかとても嬉しかった。
フランスで出版できたことにあらためて感謝します。

2007年に、初めてベルギーのKanaに『同棲時代』を紹介したとき、担当の編集長が「シネマ!」と言ってくれたことを今でも覚えています。
『ベティ・ブルー』を観た時に、『同棲時代』に共通する世界観を感じたので、きっとフランス圏ならわかってくれるはず、と単純に思い込んでいました。
この『愛の犯罪者』の原作も『ベティ・ブルー』のフィリップ・ジャン。
映画『ベティ・ブルー』の公開は上村一夫が亡くなった1986年でした。
原風景についての考え方しかり、愛の描き方や人が堕ちていくときの表現など共通するものを感じます。

上村一夫作品がお好きな方にはお薦めしたい映画です。

1973年、「同棲時代」連載の合間に欧州旅行を敢行した父。
あの頃、ヨーロッパでは今のように日本の漫画が読まれてはいませんでした。
父は一旅行者として海を渡り、日本の酒場を巡るように各国で毎夜酒を飲み、魅力的な異国の女性に鼻の下を伸ばしたり、街角でスケッチをしたり、初めてのヨーロッパを満喫していたようです。

証拠写真。(写真提供はイタリアの漫画研究家パオロさん)

亡くなって30年も経ってから自分の漫画がヨーロッパで読まれていること、想像したでしょうか。

とにもかくにもよかった。いろんな意味でよかった。
うれしいから恵方巻を西南西に向かって勢いよく食べよう!

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