渚ようこさんを語るとき、「昭和歌謡の歌姫」と称してしまうことがある。
彼女があの時代をこよなく愛し、歌い続けているから。
だけど昨夜、渋谷SARAVAHのライブを観て、すでに昭和の…というコピーは必要ないとあらためて思った。松石ゲルグループをバックに歌う渚さんは時代を感じさせないカッコよさを伴っていた。昭和とか歌謡などの言葉を越えた歌手だった。単純にその歌とその存在にシビれた。(この間の渋さ知らズの時もそう思った)
確かに渚さんの歌を聴けばあの時代の匂いが濃ゆく甦ってくるし、曲も時代の歌が中心。でも、渚ようこという歌手が常にブレることなく続けてきた時間が、単純に「歌謡曲」というジャンルの良さを教えてくれる。歌は凄い。言葉とメロディで心揺さぶられ、日本を想う。華奢な身体からは想像できない太い声、妖艶な響き、これは天性のものですね。あの時代のうたを歌うための人生、さらにそこにゴールデン街「汀」という人間交差点のママという人生が重なって、さらに歌は艶を増すのでしょう。
彼女が最近ライフワークとしてリリースしている『ゴールデン歌謡集』が今後ますます楽しみになる。次はどんな曲を歌うのか。あの時代のこと、実はあまり詳しくない私にとってはすべてが新鮮。今回の第二集『エロスの朝』収録の「ディープパープルはどこ?」なんてたまりません。最高です。ホントに。あんな曲いま歌えるの渚さんだけ!あの時代の歌を歌うには気合いが要る。今より情報も手段も少なく、なんとなく音楽が続けられない時代だったと思うから必死さが違う、プロしか残れない時代だった。だから時代に足跡残した人はみんな太くて頑丈に感じる。それをいま体現していいのは、その時代を心から愛し、原曲を越える力のある人。渚ようこさんしかいないでしょう。(偉そうですみません)
そして、渚ようこさんを語るとき、そこにはいつも父の存在を感じることができる。ある意味、家族よりも上村一夫を愛しく想ってくれている人だと思う。彼女のお店「汀」に散りばめられた上村一夫の絵を眺めるたびそう思う。
父は私が二十歳の時に亡くなった。まさかそんなに早く逝くと思っていなかったので、まぁいつか酒でも酌み交わしながら話せればいい、と思っていた。だけど私はお酒が飲めず、父は成人と同時にいなくなった。因果なものだ。でも、この世にいなくなってもこんなに作品を好きでいてくれる人がいる。父を語る人がいる。とても幸せな人生だったに違いない。そして私も父を通して多くの面白い人達と繋がることができた。それが一番の財産だと思っている。
とにもかくにもそうやって、渚さんは私の歌姫であり良き友なのだ。
今回の神楽坂artdishの原画展「花の輪廻」会期中にも歌いにきてくださる。
二年前に開催された「渚の部屋」でも歌ってくれた。上村一夫の絵から抜け出したような渚さんが父の絵に囲まれ、はじめて「同棲時代」をカバーしてくれた時のこと、今でも鮮明に憶えている。高橋ピエールさんとのアコースティックなライブ。たゆたうような、本当に素敵な歌だった。まさか再び歌っていただく機会があるとは。上村一夫と渚ようこの世界がお好きな方は必見です。渚ようこ未経験の方はこの機会に是非!私もいまから楽しみで楽しみで。
上村一夫原画展「花の輪廻」@神楽坂artdish
2013年3月19日(火)~4月21日(日) 15:00~22:00(月曜休)
♥ 特別イベント:渚ようこLIVE「愛とエロスの小部屋」
4月7日(日)開場18:30、開演19:00
出演:渚ようこ、高橋ピエール(Guitar)
予約制:3,000円(1drink付)
※お申し込みは、 g@artdish.co.jp まで
昭和の香りを散りばめた歌謡曲の歌姫、そして上村作品のミューズでもある渚ようこが2013年2月にリリースした「ゴールデン歌謡・第2集 エロスの朝」をひっさげ登場!
2011年に開催された上村一夫原画展「渚の部屋」に続き今回もスペシャルなライブを披露します。上村一夫縁(ゆかり)のあの唄、この唄、懐かしい歌謡曲のナンバーから、オリジナルまで、高橋ピエールのギターと共にアコースティックな時間に酔いしれるひとときを…
神楽坂artdish
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