上村一夫の没後、初めて絵を展示したのは2001年。
彫刻家の大森暁生氏とのコラボ展『凍鶴』にて、
大森氏の彫刻とともに『凍鶴』の原稿を展示しました。
翌年、川崎市民ミュージアムにて『上村一夫の世界』という
回顧展を開催していただきました。
以降は自分が復刻を手伝うようになり、いろいろな場所で
漫画の原稿や表紙絵、挿絵などを展示させていただいております。
父の復刻仕事を始めて早20年、あっという間に自分も来年還暦に。
若い頃は「まあ50代になったら父親の原稿をどうするか考えよう」
などとぼんやり思っていましたが、いまだに原稿の安全な保管場所は
見つかっておりません。
会社もない、倉庫もない、資金もない、それが実状です。
おまけに年をとり、重い紙の束を運ぶのがしんどくなってきました。
日本では本を出そうにもなかなかお声がかからない昨今、
ありがたいことに海外では毎年出版をしてもらっておりますが、
国内でも作品が忘れ去られぬようプロモーション的なことをしています。
そのために書庫をひっくり返し、膨大な原稿を整理して
展示をしたり、グッズを制作したり、電子書籍を作ったり。
漫画の復刻をするにも、なかなか体力が必要なのでした。
年を経るとともに上村一夫の描いた世界が沁みてきて、
ようやく仕事としての楽しみさえ見出した頃、
皮肉にも体力の衰えを感じるという始末。
果たしていつまでできるだろう、と思うこともしばしば。
自分が立ち止まってしまっても、作品は残っていくのかもしれませんが
遺族として原稿を安心して繋いでいけるような場所を探さなければと思います。
というわけで、残された家族の体力も限界が近づき、
いつまで上村一夫の作品を公開できるかわからないので、
生の原画を見てみたいと思ってくださる方は、
今のうちに見ておいていただければと思います。
「同棲時代」がヒットした頃、サイン会での写真