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上村裏日誌

2026/04/25 Sat

贋作か否か

昨年、ちょっとした贋作問題にぶつかりました。

今までにない経験だったので、こちらに記すことにします。

 

2026年に開催される海外での展覧会に、コレクター所蔵の上村一夫の原画が出品されると連絡が入りました。

数点は我が家に存在しない本物の原稿でしたが、1点だけ見覚えのあるカラーイラストが混じっておりました。

それは少し前のネットオークションで見かけたもの。

当時、それが本物か偽物かで関係者とラインで話し合ったことがありました。

その時は「よくできた偽物」ということでスルーしていたのですが、どうやらそれを海外のコレクターが

落札していたようです。

そこで、「そのイラストは我が家に本物があります。偽物だと思うので、出展しないでください」とお伝えした

ところ、「これはそのイラストの下絵ではないか」というのです。

 

そのイラストは1970年代中頃のエアブラシに凝っていた時期にエアブラシで描かれたものなのですが、

その頃の忙しさといったら殺人的で、とてもとても下絵など丁寧に描いている時間はなかったはず。

現にカラーイラストの下絵なんてものは残っておりません。

それなのに、そのイラストは本人が当時使っていたオリジナルの原稿袋に入っており、イラストが描かれた

紙は上村一夫がカラーイラストを描く時に使っていたイラストボードに描かれていた、と写真まで送られて

きたのです。(ご丁寧に原稿袋は黄ばんで破れた箇所があり、イラストボードに至っては劣化した

セロハンテープの跡まで残っておりました)

 

下絵だとしたらなんでわざわざ原稿袋に入れるのさ。

そうは言っても若干心が揺れてしまい、心強い助っ人に相談することにしました。

やはり「下絵ということはないでしょう」というご意見をいただき、原稿袋も過去に販売したり

オークションに出たこともあるので入手可能、最近の贋作は経年劣化も加工するということでした。

ですよね!ほっ。

 

そして私は発見してしまったのです。決定的ともいえる点を。

通常、エアブラシを使う場合は絵の周りを必ずマスキングしますが、イラストを絵の具と筆で描くときは

トンボの外まではみ出して塗ります。ところが、その贋作と思われるイラストは、絵の具と筆で描かれている

のに、なぜか絵の周りをきっちりマスキングしていたのです。

不自然!!

これは決定的な証拠と確信し、先方にメールをしましたが、返答なし。

その後、彼のコレクションからそのイラストが外されたか否かは不明のまま。

海の向こうで本物か偽物かわからない絵が上村一夫が描いたものとして飾られたりしたら嫌だなぁぁぁ……

海外ともなると日本より情報が少なく、不安増大です。

 

今後も本物か偽物かわからないようなものが出回った場合、その真偽を決めるのは誰なのでしょうか?

ネットオークションで上村一夫の原画が出ることは比較的少なく、出品されたとしても、その線でだいたい

本物か偽物かわかります。

あの色香のある線は粋な好色家でないと描けないし、その線を一番見ているのは自分だという自負があるので…

なんて思っておりましたが、今回のことでいろいろな方にご意見を伺ったところ、必ずしも遺族にその判断が

託されるとは限らないということを知りました。

美術や骨董の世界に所定の鑑定機関があるように、今後漫画界の鑑定にもそのような機関ができるのかも

しれませんが、まだまだ先のことでしょう。

そんなことを考えるようになって以来、「なんでも鑑定団」を必ず観るようになった私。

この問題、結構大事なポイントだと思うのですが、皆さんはどうお考えになりますか?

 

こちらが問題になった贋作と思われるイラストと、我が家で所蔵しているイラストです。

 

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