以前のブログで、上村一夫が書いた「鬼恋童」の解説を読んで『青春横丁』が読みたくなったと書いたが、その後、書庫から『青春横丁』の原稿を探し出した。
幸い原稿はすべて揃っていた。
17才の街子は、15の夏に3人の男たちに犯されてしまう。
その悪夢にうなされながら、ある日学校を辞めて青春横丁に住みつき、ラーメンの屋台を引いて暮らすようになる。
そこには街子が慕う医者の北沢南雲や、ヤクザ、ゲイのママ、青い目のレズビアンなど、様々な人間が入り乱れていた。
ある日、街子は若い陶芸家の心平という男と出会い、恋に落ちる。
恋に溺れる街子と心平。
しかし、溺れるほどに心平の心には陶芸への思いが溢れ、、、
ある日 、心平は街子に黙って街を出た。
心平を追う街子。
ついに見つけた心平は、福井のとある街で陶芸に打ち込んでいた。
創作に没頭し風貌の変わった心平の姿に驚愕する街子だったが、ふたりの仲は再び燃え上がる。
ある日、出先で怪我をした心平の元に、京都から母親がやってくる。
心平の実家は京都西陣の織元であった。
対立する厳粛な母と奔放な街子。
街子は旅に出た心平を待つために京都へ行き、
厳格な母のもと、心平の実家で女中として心平を待つと決めた。
激しさと静けさ、人情と愛憎が入り混じり、可笑しいような、哀しいような、そんな気持ちにさせる物語。
福井の取材旅行を思わせる風景が時々現れて、少し胸が痛んだ。
横丁の場面などは、上村一夫の原風景のひとつなのでは、と思うところもあり、この後に連載が始まる「関東平野」への布石になったのかもしれないと感じた。