私には一回りくらい年の離れた従兄弟がいて、もう何年も会っていないのだけれども、今年 阿久悠さんのテレビの撮影のために、久しぶりに阿久さんの弔辞を出したところ、弔辞を入れていた箱の中から、その従兄弟が父に書いてくれた手紙が見つかりました。
父が亡くなった時、私が二十歳だったので、その従兄弟はたぶん小学校に上がるか上がらないかくらいの年だったのではないかと思います。
その従兄弟が父が亡くなった時に書いてくれた手紙です。
最後の『天ごくについてからおよみください。』が可愛らしくて、鼻の奥がツンとしました。
文中のホームズは、上村一夫が表紙と挿絵を描いた「名探偵ホームズ全集」(小学館/1983年)のことです。
幼い従兄弟が読むにはちょうど良い時期に出版されたので、母が送ったのかもしれません。
ちょっと劇画風なホームズですが、緻密な線、丁寧な彩色の美しい原画が残っています。
全15巻!
従兄弟はとても賢くかわいい子だったので、たまたま父が休日で家にいる時に彼が遊びに来たりすると、いつになく嬉しそうに遊び相手になって、秘密基地ごっこやマジックなどをして遊んでいました。
私はその頃思春期で、父にも小さな子供にも興味がないひねくれ者でしたが、明らかに嬉しそうな父を見て、ああこの人はつくづく息子が欲しかったんだな、と思ったのものです。
中学生の時に父親を亡くし、女手一つで子供3人を育てなければいけなくなった母親と姉二人という家族となり、多感な時期に母と姉の苦労を目の当たりにしたうちの父。大人になれば、仕事では女を描き、家に帰れば恐い妻と娘が待っている。身内の女は皆逞しく、外の女は美しかったり優しかったりしたのかもしれないけれど、やっぱり女は恐いと思っていたに違いありません。
せめて我が子が自分と同じ男だったら、このナイーブな気持ちを分かち合えたかも…などと思っていたのだろうと私はずっと密かに思っていました。
なんせ幼い私に初めて買ってきたお土産はおもちゃのピストルでしたし、父が売れてる頃に調子に乗って出したシングルレコードのタイトルは『坊や お空をごらん』でした。
女難の人生。こればかりは運命だったのかもしれないけれど、最後に従兄弟に本をプレゼントできて良かったね、と思いました。
今日は久しぶりに『坊や お空をごらん』でも聴いてみますか。笑