その神楽坂の原画展で、かねてより父のことを研究されているという貴重な人物とお会いすることとなる。今回の「リリシズム」を企画・編集してくださった森田さんだ。噂には聞いてお名前は知っていたけれど、お会いするのは初めてだった。二度も会場に足を運んでくれた森田さんが何げなく残した言葉に驚いた。「原画展をやれてよかったですね、あとがきに書いていらっしゃいましたもんね」。そうだった!自分でもすっかり忘れていたのだけれど、「一葉裏日誌」が復刻されたとき、初めて書いたあとがきにそんなことを書いたのだった。父のことのみならずこんなろくでもない上村一夫の娘というだけの人間のあとがきまで丁寧に読んで覚えていてくださったのか。感動した私はいつか森田さんと本を作りたい、と願った。それからいろいろ遠回りしながら種をまき、はじめて森田氏に相談を持ちかけた2009年秋。つづく
2011/09/03 Sat